【第138回】寓話への刮目Ⅱ「惑星セロンの対立」(2/3)/『ひとはなぜ戦争をするのか』―Albert Einstein と Sigmund Freud の往復書簡―
⇧4つの肌の色が対立し約200もの国境をもつ惑星と外部の脅威
※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。
①Albert Einstein と Sigmund Freud の往復書簡
(執筆中)
■Freud の返信
ですが、「暴力による支配」から「法による支配」への転換を促した戦争もあります。かつてよりも大きな政治的単位を作り上げ、その中では「暴力」を禁じ、法秩序の力で争いの決着をつけるようにしたのです。(中略)とすれば、逆説的に聞こえるかもしれませんが、こう認めねばならないことになります。人々が焦がれてやまない「永遠の平和」を達成するのに、戦争は決して不適切な手段ではないだろう、と。戦争は大きな単位の社会を生み出し、強大な中央集権的な権力を作り上げることができるのです。中央集権的な権力で暴力を管理させ、そのことで新たな戦争を二度と引き起こせないようにできるのです。
破壊欲動はどのような生物の中にも働いており、生命を崩壊させ、生命のない物質に引き戻そうとします。エロス的欲動が「生への欲動」をあらわすのなら、破壊欲動は「死の欲動」と呼ぶことができます。「死の欲動」が外の対象に向けられると、「破壊欲動」になるのです。生命体は異質なものを外へ排除し、破壊することで自分を守っていきますが、破壊欲動の一部は生命体へ内面化されます。
お気づきでしょう。このような攻撃性の内面化が強すぎれば、ゆゆしき問題となります。ですが、攻撃性が外部世界に向けられるなら、内面への攻撃が緩和され、生命体によい影響を与えます。
ともあれ、あなたもご指摘の通り、人間の攻撃性を完全に取り除くことが問題なのではありません。人間の攻撃性を戦争という形で発揮させなければよいのです。戦争とは別のはけ口を見つけてやればよいのです。
本書簡で Einstein と Freud は、戦争を抑止する手段として「世界機関の樹立と各国の主権譲渡」や「社会の文化的発展と欲動の制限」を提示し、同時にその実効性の低さにも言及している。しかし、その文脈の中で断片的だが触れられている要素がある。「特定の方向」「外部世界」などがそれである。これはおそらく、本稿(1/3)で取り上げた「内集団」と「外集団」、また「外部の脅威」「共通の敵」といった観念や図式に符合する。
②Ronald Reagan 大統領による国連総会演説
では「地球人同士」あるいは「地球上」に枠組みを限定して考えた場合、人類が戦争から解放されうる可能性はあるだろうか。この問題に関連する説話がある。かつて米ソの冷戦時代に、米国の Ronald Reagan 大統領は第42回国連総会(1987年9月21日)の一般討論演説で、人類の連帯や冷戦下の対立解消を訴える文脈で、「宇宙人(Alien)の脅威」と「人類の結束」について言及している。 Address to the 42d Session of the United Nations General Assembly in New York, New York | Ronald Reagan 演説終盤(下記動画:29分頃)における当該内容は次の通りである。(下線筆者)
In our obsession with antagonisms of the moment, we often forget how much unites all the members of humanity. Perhaps we need some outside, universal threat to make us recognize this common bond. I occasionally think how quickly our differences worldwide would vanish if we were facing an alien threat from outside this world.
私たちが目前の対立に囚われている時、人類の全メンバーをいかに多くのものが結びつけているかを忘れがちである。おそらく、この共通の絆を私たちが認識するためには、宇宙の外からの何らかの普遍的な脅威が必要であろう。私が時々考えるのは、地球の外からの宇宙人の脅威に直面した時、世界中の私たちの相違がいかに早く消え去ることかということである。
4つの肌の色(白・黄・茶・黒)をもつ高度な種族(霊長類=人類)が絶えず対立し、かつその種族によって200もの国境線が引かれた惑星(地球)。もしその国境線が無用となった時、人類の意識はいかに変容するだろうか。そして外部(人類より高度な地球外生命体)の脅威が現実のものとなった時、彼らの目にこの惑星はいかに映るであろうか。
※参考文献
Albert Einstein、Sigmund Freud、『ひとはなぜ戦争をするのか』(原題:Why War? A Correspondence Between Albert Einstein and Sigmund Freud)、講談社、2016年
松原久子(ドイツ語原著)、田中敏(訳)『』、文藝春秋、2005年
三谷郁也『白人侵略 最後の獲物は日本 ─なぜ征服されなかったのか 一気に読める500年通史』、ハート出版、2021年
石原慎太郎『「NO」と言える日本:新日米関係の方策』、光文社、1989年
安倍晋三(著)・橋本五郎(聞き手)・尾山宏(聞き手・構成)・北村滋(監修)『安倍晋三 回顧録』、中央公論新社、2023年






