株式会社有田アセットマネジメント|知的財産(無形資産)と伝統的価値観を次代へ継承

06-6131-7514 9:00 ~ 18:00(平日)

お問い合わせはこちら

時論

軍事・外交 宇宙・地球 政治・公共 哲学・思想 国際・海外

【第138回】寓話への刮目Ⅱ「惑星セロンの対立」(2/3)/『ひとはなぜ戦争をするのか』―Albert Einstein と Sigmund Freud の往復書簡―

⇧4つの肌の色が対立し約200もの国境をもつ惑星と外部の脅威

※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。

①Albert Einstein と Sigmund Freud の往復書簡

(執筆中)

20世紀の二つの世界大戦間の1932年7月、国際連盟の国際知的協力機関がユダヤ系ドイツ人の理論物理学者 Albert Einstein にある提案をした。それは「今の文明において最も大事だと思われる主題について、最も意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」というものだった。Einstein が選んだ主題は「戦争」(人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?)、そして相手はユダヤ系オーストリア人の心理学者 Sigmund Freud だった。当時 Einstein は53歳、Freud は76歳であった。
Einstein は「光量子仮説」「ブラウン運動に関する気体論的研究」「統一場理論」や「(特殊・一般)相対性理論」を発表、1921年ノーベル物理学賞を受賞し「20世紀で最も影響力のある物理学者」と評価されている。1933年にナチスに追われて渡米し帰化。1947年に「国際連合」にメッセージを送り、同組織を改編して強力な「世界政府」を樹立し、核兵器をその管轄下に置くべきことを提唱した。
また Freud は精神病理学者で精神分析学の創始者である。ヒステリー(独:Hysterie)症の治療法の研究から無意識の存在を確信し、カタルシスや自由連想法を用いる精神分析の方法を発見して深層心理学を樹立した。著書に『ヒステリー研究』(原題:Studien über Hysterie)『夢判断』(原題:Die Traumdeutung)『精神分析入門』(原題:Vorlesungen zur Einführung in die Psychoanalyse)などがある。
往復書簡の形式で纏められた書『ひとはなぜ戦争をするのか』(原題:Why War? A Correspondence Between Albert Einstein and Sigmund Freud)は、「宇宙」と「心」という二つの闇に理を見出した二人の偉人が、戦争と平和そして人間の本性について真摯に語り合う内容である。筆者が考えるその最たる要所を以下に引用する。訳は上智大学外国語学部ドイツ語学科教授の浅見昇吾氏による。(抜粋・下線・赤字・太字、筆者)
■Einstein の提示
さて、数世紀ものあいだ、国際平和を実現するために、数多くの人が真剣な努力を傾けてきました。しかし、その真撃な努力にもかかわらず、いまだに平和が訪れていません。とすれば、こう考えざるを得ません。人間の心自体に問題があるのだ。人間の心のなかに、平和への努力に抗う種々の力が働いているのだ。
国民の多くが学校やマスコミの手で煽り立てられ、自分の身を犠牲にしていく―このようなことがどうして起こり得るのだろうか?答えは一つしか考えられません。人間には本能的な欲求が潜んでいる。憎悪に駆られ、相手を絶滅させようとする欲求が! 破壊への衝動は通常のときには心の奥深くに眠っています。特別な事件が起きたときにだけ、表に顔を出すのです。とはいえ、この衝動を呼び覚ますのはそれほど難しくはないと思われます。多くの人が破壊への衝動にたやすく身を委ねてしまうのではないでしょうか。これこそ、戦争にまつわる複雑な問題の根底に潜む問題です。この問題が重要なのです。人間の衝動に精通している専門家の手を借り、問題を解き明かさねばならないのです。ここで最後の問いが投げかけられることになります。人間の心を特定の方向に導き、憎悪と破壊という心の病に冒されないようにすることはできるのか?

■Freud の返信

ですが、「暴力による支配」から「法による支配」への転換を促した戦争もあります。かつてよりも大きな政治的単位を作り上げ、その中では「暴力」を禁じ、法秩序の力で争いの決着をつけるようにしたのです。(中略)とすれば、逆説的に聞こえるかもしれませんが、こう認めねばならないことになります。人々が焦がれてやまない「永遠の平和」を達成するのに、戦争は決して不適切な手段ではないだろう、と。戦争は大きな単位の社会を生み出し、強大な中央集権的な権力を作り上げることができるのです。中央集権的な権力で暴力を管理させ、そのことで新たな戦争を二度と引き起こせないようにできるのです。

破壊欲動はどのような生物の中にも働いており、生命を崩壊させ、生命のない物質に引き戻そうとします。エロス的欲動が「生への欲動」をあらわすのなら、破壊欲動は「死の欲動」と呼ぶことができます。「死の欲動」が外の対象に向けられると、「破壊欲動」になるのです。生命体は異質なものを外へ排除し、破壊することで自分を守っていきますが、破壊欲動の一部は生命体へ内面化されます。

お気づきでしょう。このような攻撃性の内面化が強すぎれば、ゆゆしき問題となります。ですが、攻撃性が外部世界に向けられるなら、内面への攻撃が緩和され、生命体によい影響を与えます。

ともあれ、あなたもご指摘の通り、人間の攻撃性を完全に取り除くことが問題なのではありません。人間の攻撃性を戦争という形で発揮させなければよいのです。戦争とは別のはけ口を見つけてやればよいのです。

本書簡で Einstein と Freud は、戦争を抑止する手段として「世界機関の樹立と各国の主権譲渡」や「社会の文化的発展と欲動の制限」を提示し、同時にその実効性の低さにも言及している。しかし、その文脈の中で断片的だが触れられている要素がある。「特定の方向」「外部世界」などがそれである。これはおそらく、本稿(1/3)で取り上げた「内集団」と「外集団」、また「外部の脅威」「共通の敵」といった観念や図式に符合する。

②Ronald Reagan 大統領による国連総会演説

では「地球人同士」あるいは「地球上」に枠組みを限定して考えた場合、人類が戦争から解放されうる可能性はあるだろうか。この問題に関連する説話がある。かつて米ソの冷戦時代に、米国の Ronald Reagan 大統領は第42回国連総会(1987年9月21日)の一般討論演説で、人類の連帯や冷戦下の対立解消を訴える文脈で、「宇宙人(Alien)の脅威」と「人類の結束」について言及している。 Address to the 42d Session of the United Nations General Assembly in New York, New York | Ronald Reagan 演説終盤(下記動画:29分頃)における当該内容は次の通りである。(下線筆者)

In our obsession with antagonisms of the moment, we often forget how much unites all the members of humanity. Perhaps we need some outside, universal threat to make us recognize this common bond. I occasionally think how quickly our differences worldwide would vanish if we were facing an alien threat from outside this world. 

私たちが目前の対立に囚われている時、人類の全メンバーをいかに多くのものが結びつけているかを忘れがちである。おそらく、この共通の絆を私たちが認識するためには、宇宙の外からの何らかの普遍的な脅威が必要であろう。私が時々考えるのは、地球の外からの宇宙人の脅威に直面した時、世界中の私たちの相違がいかに早く消え去ることかということである。

4つの肌の色(白・黄・茶・黒)をもつ高度な種族(霊長類=人類)が絶えず対立し、かつその種族によって200もの国境線が引かれた惑星(地球)。もしその国境線が無用となった時、人類の意識はいかに変容するだろうか。そして外部(人類より高度な地球外生命体)の脅威が現実のものとなった時、彼らの目にこの惑星はいかに映るであろうか。

※参考文献

Albert Einstein、Sigmund Freud、浅見昇吾 (訳)、養老孟司・斎藤環(解説)『ひとはなぜ戦争をするのか』(原題:Why War? A Correspondence Between Albert Einstein and Sigmund Freud)、講談社、2016年
松原久子(ドイツ語原著)、田中敏(訳)『驕れる白人と闘うための日本近代史』、文藝春秋、2005年
三谷郁也『白人侵略 最後の獲物は日本 ─なぜ征服されなかったのか 一気に読める500年通史』、ハート出版、2021年
石原慎太郎『「NO」と言える日本:新日米関係の方策』、光文社、1989年
安倍晋三(著)・橋本五郎(聞き手)・尾山宏(聞き手・構成)・北村滋(監修)『安倍晋三 回顧録』、中央公論新社、2023年

著者プロフィール

有田 仁(Jin Arita)

1966年(昭和・丙午)大阪府堺市生まれ。有田アセットマネジメント代表取締役。大阪工業大学大学院 知的財産研究科修了。NTT(日本電信電話)グループ・髙島屋等勤務。NTT研究所系教授陣に師事し研究発表(国際標準化専攻)。米国系業界団体(American Chamber of Commerce in Japan、Cloud Security Alliance Japan Chapter)等の運営・イベント企画に関与。

出雲国・松江藩(雲州松平家)とその出身者に所縁あり(昭和改元時の宰相・若槻禮次郎、および大正期の東京弁護士会会長・岸清一)。座右の銘は「温故知新」と「古今東西」、「和魂洋才」と「清濁併吞」。愛読の書は 池波正太郎氏の作品群。

著書に『平成・令和社会への違和感と伝統的価値観の復古』(幻冬舎 2026年)。研究論文に『自動運転システムにおけるクラウドネットワークの通信遅延条件(共著)』(日本知財学会 2016年)『クラウドセキュリティ技術分野の知的財産戦略に関する研究』(大阪工大院・紀要 2016年)『クラウドセキュリティ技術に関する特許出願傾向と特性』(電子情報通信学会 2015年)等。

時論カテゴリー

時論人気記事

時論関連記事

PAGETOP
ページトップヘ