【第5回】「大阪・中之島」地区再開発《其ノ一》―大阪大学中之島センター/中之島4丁目地区の近況―
※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、筆者が所属する組織の公式見解を示すものではありません。
⇩<参考>中之島4丁目地区(赤い点線の枠内)
「端午の節句」の5月5日、大阪市北区の「大阪大学中之島センター」(大阪大学中之島センター (osaka-u.ac.jp))を訪れました。向学のため当社海外渉外顧問(無償)の Wolf(筆者内縁)を帯同しました。同センターは、大阪大学発祥の地である中之島キャンパス(※1)跡地に、2004年(平成16年)4月、サテライトキャンパスとして開設。同地(医学部跡地)はまた、山崎豊子氏(※2)原作、映画やテレビドラマで有名な『白い巨塔』の舞台(浪速大学)のモデルとなっています。同センターは2023年(令和5年)4月の改修オープン後、そのコンセプトに、<文化・芸術・学術・技術の「四つの知」が交差する、「社学共創・アート・産学共創」のグローバル発信拠点の形成>が掲げられています。センター1階から2階へ通じる吹き抜けの壁面には、「適塾」とその創始者である緒方洪庵をテーマ(※3)に、美術家の森村泰昌氏(※4)による『適塾の集い』が常設展示されています。
大阪市は「中之島4丁目のまちづくり」を以下に示す概要で進めています。(中之島4丁目のまちづくり)大阪市:中之島4丁目のまちづくり (…>所属別公表状況>所属別公表状況)
中之島地区では、水辺を生かした都心の魅力あふれるシンボルアイランドとして都市再生に資するまちづくりを民間事業者と連携しながら進めています。中之島4丁目においては、令和4年2月に「大阪中之島美術館」が開館するとともに、再生医療をベースに、次の時代に実現すべき新たな未来医療の実用化・産業化を推進する国際的な拠点として令和6年6月に「未来医療国際拠点(Nakanoshima Qross)」が開業しました。今後、これを契機として、周辺の民間開発プロジェクトや市有地の開発が相互に連携・調和するまちづくりを誘導し、大阪の文化・芸術・学術の中心を担う国際的な拠点形成を図ります。
また<隣接拠点と中之島連携イメージ>として「大阪駅周辺エリア(うめきた2期地区)」との連携を視野に入れています。(中之島の開発状況 ※2013年1月現在)中之島まちづくり構想について
・中之島は、セントラル大阪の一翼を担い、大阪の都市格・都市魅力を発信するエリア
・開発コンセプトを都市再生緊急整備地域内の他のエリアと差別化しつつ適宜連携。
・他エリアとの差別化のために、さらなる特別な地区(特定都市再生緊急整備地域など)の指定が望まれる。
・中之島4~6丁目地区においては合わせて15haの広さ(うめきたⅡ期に匹敵)を持つ、開発可能な低未利用地が存在。
・都市魅力戦略会議における重点取組みとシナジーが生まれるよう繋がりを考慮。
・中之島各ゾーン間でシナジーが生まれるように検討。
センターの南側に位置する未来医療国際拠点「Nakanoshima Qross(中之島クロス)」(未来医療国際拠点Nakanoshima Qross(中之島クロス) (nakanoshima-qross.jp))は、2024年(令和6年)6月29日のオープンが予定されています。当拠点は、2019年(令和元年)に民間企業等21社と大阪府で設立の「一般財団法人 未来医療推進機構」(※5)が核となり、拠点形成が進められています。そのコンセプトには、「未来医療の創造、実践、共有を通して、未来への貢献と挑戦を続ける」ことが掲げられ、再生医療や細胞治療に関わる様々な知識や情報を提供していくとされています。当拠点は、「未来医療 R&D センター(未来医療の創造)」、「未来医療 MED センター(未来医療の実践)」、「中之島国際フォーラム(未来医療の共有)」の3施設で構成されています。
またセンター東側に隣接する「大阪中之島美術館」(大阪中之島美術館 (nakka-art.jp))は、去る2月に早や開館2周年を迎え、現在も盛況を維持しています。本大型連休に会期の終盤を迎えた人気の展覧会『モネ 連作の情景』は、最終日を翌日に控えたこの日も、入場待ち1時間の長蛇の列を作る混雑でした。<同展覧会は2月10日からの80日間の会期で延べ45万2,943人が来場。個別の展覧会として同館の最多動員記録を更新した模様です。東京展(上野の森美術館、昨年10月20日~本年1月28日)と合わせた来場者数は(延べ)計91万7,072人に到達。>
(※1)1993年(平成5年)、吹田キャンパスに移転
(※2)山崎豊子氏:大阪市出身、『華麗なる一族』や『不毛地帯』など数多くの社会派小説で著名な直木賞作家
(※3)大阪大学は江戸時代の「懐徳堂」と「適塾」にその源流をもつ
<参考>緒方洪庵:江戸時代後期の医師・蘭学者、号は「適々斎」など、大坂に適塾(適々斎塾)を開設、天然痘の治療に大きく貢献
懐徳堂:1724年(享保9年)、大坂の豪商により開設された学問所
適塾:1838年(天保9年)開設の蘭学塾、福澤諭吉や大村益次郎など多くの門下生を輩出
(※4)森村泰昌氏:大阪市出身、セルフポートレイト写真で著名
(※5)一般財団法人 未来医療推進機構:理事長は大阪大学大学院、医学系研究科未来医療学寄附講座特任教授の澤芳樹氏(一般社団法人 日本再生医療学会、前理事長)
⇧センター外観、写真左側のブロンズ像は、英国の彫刻家、「Lynn Chadwick」氏による『Jubilee IV』(1985年)(隣接する大阪中之島美術館所蔵)
⇧センター入口近く正面に大きく展示の「改正増補 国宝大阪全図 」(部分)、1863年(文久3年)刊、西方面に往時の中之島の様子が窺え、東方面には「御城」(大坂城)の描写も
⇧センター最上階(10階)の「佐治敬三メモリアルホール」も装い新た
⇧センター2階のリーガロイヤルホテル直営「CAFETERIA AGORA」は、文化・歴史と芸術が織りなす広大なコミュニケーションスペース
⇧「ルネ・マグリットの男」、1970年(昭和45年)、人形作家「四谷シモン氏」制作、「日本万国博覧会/せんい館」展示
⇧未来医療国際拠点「Nakanoshima Qross(中之島クロス)」は2024年(令和6年)6月29日オープン予定
⇧「大阪中之島美術館」、この日も展覧会『モネ 連作の情景』の入場待ちで長蛇の列
また同館南側には「国立国際美術館」(国立国際美術館 (nmao.go.jp))と「大阪市立科学館」(大阪市立科学館 公式ホームページ (sci-museum.jp))(改修工事のため全館休館中)が並び、これらを結ぶ連絡橋の整備も完了、来場者の回遊性に大幅な向上が見られます。さらに近隣には、「NTTテレパーク堂島ビル」や「ABCホール」(朝日放送テレビ)、「関電ビルディング」「大阪地方検察庁」など産官の高層ビルが林立しています。この様に中之島4丁目地区は、この数年間の再開発で「点」から「線」を経て「面」としての様相を呈し、一体性ある「文化・芸術・学術・医学の発信拠点」として魅力を増した様に思われます。
⇧【後日追記】「大阪中之島美術館」から望む、雨に煙る(けぶる)堂島地区の様子、左から「大阪地方検察庁」「NTTテレパーク堂島ビル」と8月1日に開業した「フォーシーズンズホテル大阪」、2024年(令和6年)9月22日撮影
⇧【後日追記】8月1日に新装開館した「大阪市立科学館」、地下1階吹き抜け(atrium)展示の日本初プラネタリウム投影機(ドイツ「Carl Zeiss AG」製)、2024年(令和6年)9月22日撮影
⇧【後日追記】8月1日に新装開館した「大阪市立科学館」、ハイテク繊維のロシア宇宙服(レプリカ)と大勢の家族連れ(ちびっこ)、2024年(令和6年)9月22日撮影