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【第60回】平成・令和社会への違和感《其ノ二》Smartphone Zombies《後編》―生まれ来る新世代に期する「公共教育」と「社会制度構築」―

⇧(写真左)大丸心斎橋店、エスカレーター前ディスプレーより、2022年(令和4年)5月29日撮影

※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、筆者が所属する組織の公式見解を示すものではありません。

①令和の世における平成世代の割合

総務省統計局の「人口推計/2024年(令和6年)7月報(概算値)」(202407.pdf (stat.go.jp))によると、日本の総人口は1億2396万人、そのうち「平成」生まれの世代(0~35歳)は3859万人(同統計の「0~34歳」値で算出)と、総人口比で31.1%を占めるに至る。筆者は新入社員の時期に、大東亜戦争(対米戦争)の戦前・戦中派およびその下の団塊世代といった、上の世代から「新人類」(所謂バブル期における理解不能の若年層)と呼ばれた世代。そうした筆者から見ても違和感を覚えざるを得ない「平成」世代(集団)が、日本社会において早や一定の存在感や影響力を有する事実に隔世の感を覚える。

⇧上記統計を基に筆者作成

②Smartphone Zombies

(執筆中)

本稿前篇の Pandemic(世界的伝染病)宜しく、海外では Smartphone を携えて街を徘徊する「生ける屍(Zombie)」の如き群衆を、Smartphone Zombies あるいは Smombie と呼び揶揄している。これはまさに、Smartphone 依存者によって公共空間が占拠される不気味さを言い得ている。

英国の IllustratorAnimator、Steve Cutts 氏による一連の風刺作品群は極めて衝撃的である。これらは、Smartphone 依存に陥った人間が、主人である携帯端末(情報)の奴隷と化した現代社会を、痛烈かつ詳らか(つまびらか)に表現している。すなわち「公共空間」を共有しながらも、「対面」で直接結び付くことのない「私」(群衆)の不条理や閉塞感、疎外感を見事に描出している。

Steve Cutts 公式ウェブサイトより)
Happy HalloweenSteve Cutts's Store | Society6
Moby & The Void Pacific Choir - 'Are You Lost In The World Like Me?'』 Moby & The Void Pacific Choir - 'Are You Lost In The World Like Me?' (Official Video) - YouTube

③乳幼児に対する「愛着関係」の希薄化

(執筆中)

Smartphone 依存社会の深刻さを千思万考するに、これから生まれ来る新世代への「公共教育」や「社会制度構築」に期するより他に、もはや光明は見い出せないのかもしれない。家族・教育問題、青少年の Internet 利用等を主要テーマとするジャーナリスト石川結貴(いしかわゆうき)石川結貴 スマホ依存・居所不明・児童虐待の講演 はその著書『スマホ廃人』で、昨今の親の乳幼児に対する向き合い方について懸念の声を挙げている。(以下、同書第1章『子育ての異変』より筆者要約)

・「ベネッセ教育総合研究所」の調査報告によれば、毎日 Smartphone に接している2歳児は(その年齢ですでに)22.1%に達するという。親の側の意図として、騒いでいる乳幼児に Smartphone を与えることで静かにさせたり、知育用の Application で遊ばせたりするというものである。
・しかし「公益社団法人 日本小児科医会」は、親が子供と接する最中にも Smartphone 画面に没入する状況が、子供と「目と目を合わせて」安定した「愛着関係」を築き、子供の反応を見ながらあやす「心の交流」を損なうものとして警鐘を鳴らしている。 子どもとスマホ・メディア|公益社団法人 日本小児科医会
SmartphoneiPhone)の生みの親、米国 Apple 社の創業者 Steve Jobs 氏は、自身の子供には Smartphone を使用させなかった。デジタル産業の天才も、一人の親としてはアナログを貫き、子供たちの Smartphone 利用を厳しく制限すべきと語ったという。
・保育士や保健師などによれば親の Smartphone 依存こそが問題と懸念している。自分の母親が Smartphone 画面に没入し、そうした生活習慣の善悪を感じ取り始める5歳児が、母親の気を引こうと振る舞う健気(けなげ)さを訴える。

筆者は、昨今の親の乳幼児に対する「愛着関係」の希薄化が、20年先の Smartphone 依存予備軍を生み出し、社会問題をさらに悪化させることを危惧する。

④生まれ来る新世代への「公共教育」と「社会制度構築」の在り様

(執筆中)

前述した、Smartphone 依存者が携帯端末(情報)の奴隷と化した現代の社会状況をこれ以上悪化させないため、どの様な対策が求められるのか。石川氏はまた「Smartphone 依存予防策」として、一定の実効性が見込める公共教育や社会制度構築の事例を挙げている。(以下、同書第5章『「廃」への道』より筆者要約)

・群馬県前橋市「国立赤城青少年交流の家」で2015年(平成27年)8月、8泊9日の「セルフディスカバリーキャンプ」 (修正)9【青少年機構】国立青少年教育振興機構 が開かれ、十代のオンラインゲーム依存の参加者に対して、一時的にネット環境から隔離し生活改善の契機作りが試行された。
・韓国では青少年相談センターが医療機関と連携し、2011年11月に「シャットダウン制」が導入された。 「ゲーム中毒」対策を迫られた韓国ゲーム業界の試練 - 日本経済新聞 これは深夜0時から翌朝6時までの間、オンラインゲームにアクセスする際 ID 番号登録を必要とするものである。16歳未満の青少年にはこの ID 番号が付与されないため、実質的に深夜のゲーム利用の全面禁止とする規制である。

一方、公共空間での「ながら歩行」「ながら運転」が一向に減少しない現状での「現実的観点」に立つ対策として、次の様な海外事例が挙げられる。

・米国(ワシントン D.C.フィラデルフィア市)、中国(四川省・重慶市)ベルギー(アントワープ)等では、道路に「ながら歩行」者の専用レーンを試験導入する取り組みを行っている。(実施効果は甚だ低調の様である)
・韓国(ソウル市では、横断歩道上に通常の信号機と連動する LED 照明を設置し、頭を垂れた「ながら歩行」状態でも信号機が把握できる仕組みを導入している。(LED 照明の誤作動による事故や、システム依存への批判もみられる様である)

筆者は、通信企業や鉄道企業、自治体等による穏当な「広告・啓発活動」や、交通取締による「ながら歩行」「ながら運転」への「罰則適用」などでは、実効性の点で疑問を呈する。上述の様な、Smartphone 依存を半強制的に防ぐ「予防策」としての公共教育や、「現実的観点」に立った行政側の社会制度構築が急務と思われる。

⑤Smartphone コンテンツ提供側の思惑

(執筆中)

石川氏は Smartphone コンテンツサービスを提供する企業・産業側の思惑についても事例を挙げている。(以下、同書第5章『「廃」への道』より筆者要約)

・上述の韓国での「シャットダウン制」の取り組みは、ゲーム産業への否定的な認識を広めることとなり、関連企業の3割が倒産するなど多大な経済損失をもたらした。韓国政府はこれを受け規制緩和に転じ、「シャットダウン制」を全面禁止から「選択制」とした。背景にはゲーム産業の振興を図る思惑がある。
・消費者庁の「スマホゲームの動向/2016年(平成28年)3月」 adjustments_index_1_160915_0003.pdf によると、日本国内のゲーム(Application)市場は2014年(平成26年)で7154億円で過去2年間に60.8%増加。2017年(平成29年)以降は1兆円産業になるとの予測もある。
・「今こそ勇者になれ!」「この感動に乗り遅れるな」「女の子だったらみんな大好き」といった Catchphrase を冠して、ゲーム広告が日夜、子供たちを刺激し誘惑する。
・世間知らずな子供たちは、ほぼ無防備な状態で Smartphone を介して展開される世界と直接向き合わざるを得ない。そこでは「やろうと思えば容易にできる」システムと、その背後に十分に世間を知り尽くした大人たちがいる。すなわち Smartphone という「機械」の向こう側には、利益を得るためのビジネス戦略や巧妙な誘導が待ち構えている。

筆者は、「生まれ来る新世代が健全に暮らせる社会整備」と「産業振興・経済成長」との舵取りの妙が、Smartphone 依存社会の打開に向けた要諦と思えてならない。

※参考文献

石川結貴『スマホ廃人』、文藝春秋、2017年(平成29年)
Catherine Price、笹田もと子(訳)『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(原題:How to Break Up with Your Phone)、角川新書、2024年(令和6年)
Steve Cutts 公式ウェブサイト Steve Cutts - Home
政府広報オンライン 罰則強化!自転車のながらスマホと酒気帯び運転 | 政府広報オンライン
東京都生活文化局 自転車の「ながらスマホ」「酒気帯び運転」の厳罰化(改正道路交通法|令和6年11月1日施行)|トピックス|東京都生活文化局
大阪府交通対策協議会 STOPながらスマホ/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]

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