株式会社有田アセットマネジメント|知的財産(無形資産)と伝統的価値観を次代へ継承

06-6131-7514 9:00 ~ 18:00(平日)

お問い合わせはこちら

時論

憲法・法律 医療・介護 投資・資産 教育・家族

【第128回】「認知症」高齢者の金融機関口座凍結/「成年後見制度」現状課題(利用上の問題点)―「証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)」―

⇧2023年3月当時に在宅介護の環境下、認知症を発症した筆者母と肝胆相照らす専門家 Wolf(当社海外渉外顧問/脳神経学博士)、その後3年余りの間に症状が進行(現在は施設介護)

※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。

①「介護の社会化」と「認知症」高齢者への対峙

(執筆中)

今からおよそ半世紀前の1972年(昭和47年)に発表された、作家・有吉佐和子氏によるベストセラー恍惚(こうこつ)の人』は、近年の「認知症」(昭和期~平成期半ばの呼称は「痴呆症」)および「高齢者介護」問題に先鞭を付けた長編小説である。翌1973年(昭和48年)には森繁久弥氏、高峰秀子氏ら主演による映画化もされている。令和の現在、痴呆高齢者を扱った同書はますます今日性を強めている。

従来の「家族」(肉親)による介護負担を軽減し、高齢者介護を「社会全体」で支えるために2000年(平成12年「介護保険法(介護保険制度)」が施行された。これは介護サービス提供に必要な費用等を、国民が納める保険料と公費(税金)で賄うものである。厚生労働省の「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について」 001253798.pdf によれば、「要介護(要支援)認定者」数は2025年(令和7年)度で約717万人である。この制度がなければ、「介護離職」によって職場は回らず介護負担に耐えかねた家庭崩壊が続出していた恐れもある。介護保険制度は高齢化の問題に「介護の社会化」という回答を用意したが、そのコストは膨大な財政負担となって私たちの肩にのしかかってくる。

筆者は勤務先(NTT グループ)で2024年(令和6年)より介護休職(無給)を経て2025年(令和7年)早期退職後も、母(要介護5)の介護を続けている。母の症状(Symptom)で最も懸念されるものが「認知症」(Dementia)である。当社海外渉外顧問で「脳神経学」博士である Wolf の卓越した見識も参考に、「認知症」への向き合い方を日々考察している。厚生労働省」の定義 知っておきたい認知症の基本 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp) によると、「認知症」とは「様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態」とある。また「認知症」を引き起こす最多のものは「アルツハイマー病」など、「海馬」(hippocampus/大脳側頭葉の内側にある部位)等の神経細胞に萎縮や、神経細胞の接点(synapse)を含めた減少がみられる、「神経変性疾患」と呼ばれる病気である。

当初は、数年間続けた在宅介護の継続(通所介護主体)が筆者の本意であったが、冬季に罹患した褥瘡(床擦れ)による入院治療を機に老健施設への入所継続(事実上の施設介護)を余儀なくされ、現在に至っている。そこで筆者の取った選択は、自身が週の過半を介護施設の現場に入り込み、専門職スタッフの傍らで、肉親の介護実務を主体的に実践するものであった。具体的な内容は、母の食事介助(排泄・入浴等の介助は施設側の範疇)や訪問治療への立ち合い、個室での音楽療法(ピアノ演奏)や身体リハビリ(歩行練習等)・レクリエーション参画、また外部美容室等、近隣(娑婆)への外出機会の創出などである。これらに付随して、母名義資産の家族代理人として証券会社等との管理運用対応にも携わる。しかしそれらをもってしても、この2年余は、母の認知症と身体機能(特に脚力)低下の進行速度を辛うじて遅らせるのみであった様に感ずる。

いま振り返るに十余年前の筆者父逝去の後、少なくとも「令和」に入ってより、母の認知症が徐々に顕在化した様に記憶する。生来、勁烈 ( けいれつ )な外面をもち、前述の恍惚の人を揶揄していた母自身が、認知症を発症し「幼児退行」を伴う重い要介護者となるなど、筆者にとり夢にも思わぬ仕儀であった。また時期をほぼ同じくして、新型コロナウイルスをはじめとした感染症の拡大が社会を覆い、介護現場においても家族との面会に制約が課されるなど、悪条件が重なった。急激に高齢化が進む日本においては、「平均寿命」とともに「健康寿命」をいかに延ばすかが肝要との考え方に大いに首肯する。

②「成年後見制度」の現状課題(制度利用上の問題点)

「成年後見」は、認知症や知的障害などで判断能力(事理弁識能力)が欠けたり不十分となったために財産管理や契約締結など「法律行為」の「意思表示」が困難な者に対して、本人の代理または補助を行う後見人(親族や弁護士・司法書士等の専門家)を選任し、本人を法的に保護・支援する制度である。2000年(平成12年)施行の民法改正により、従前の「禁治産・準禁治産制度」を廃止して設けられた。成年後見は、家庭裁判所が審判を行う「法定後見」と、本人の判断能力がまだあるうちに将来に備えて予め後見人を選び、委任契約を結んでおく「任意後見」からなる。また法定後見制度には本人の判断能力の程度に応じて、(1)「後見」(従前の「禁治産」)(2)「保佐」(従前の「準禁治産」)(3)「補助」(新設)の3類型がある。なお、段階認定により本人の状態進行が第三者から確認・把握しやすい要介護(要支援1・2および要介護1・2・3・4・5)と違い、認知症には段階認定がなされていない。

この成年後見制度に関する法改正は、高齢化の進展に伴い介護の問題が深刻化する中で、前述の介護保険法との同時施行(2000年4月)を目途に準備された経緯がある。しかし本制度の利用状況(厚生労働省の調査/令和7年)は、認知症患者数(65歳以上)の約700万人に対して利用者数が約18万人と、約2.5%という極めて低い利用率に留まっている。

本制度の使い勝手を表わす以下表は、法務省および家庭裁判所ウェブサイトを基に筆者作成。

法務省「成年後見登記制度」 成年後見制度・成年後見登記制度
法務省「民法等改正法の概要」 001465481.pdf
大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬のめやす」 119_R7.04_hosyumeyasu.pdf

③「証券・金融商品あっせん相談センター」(FINMAC)

特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター」(FINMAC:Financial Instruments Mediation Assistance CenterFINMAC – 株式、債券、投資信託、FXなどのトラブルでお困りの方、お気軽にご相談ください。 は、株や投資信託、FX など金融商品の取引に関するトラブルについての相談や苦情を受け付け、公正・中立な立場で解決を図る機関である。また相談・苦情処理で利用者の納得が得られない場合の制度として、弁護士による紛争解決のための斡旋制度も運営している。FINMAC は、「日本証券業協会」など法律に基づく6つの自主規制団体の連携・協力の下に運営されている機関であり、金融庁や法務省から認証を受けている。FINMAC の設立趣旨は、裁判による紛争解決と比べた「裁判外紛争解決手段」(ADR:Alternative Dispute Resolution)が持つ特長、①より簡便で迅速な解決②専門家の知識経験を生かしたきめ細やかで実情に即した解決③当事者のプライバシーに十分配慮した解決、によって金融分野における ADR の一層の充実を図る必要性に応えるものである。

筆者も、認知症を罹患する母の金融機関口座が現在凍結状況にあることに関して FINMAC へ相談を試みた。これに対して、認知症高齢者の金融機関口座資産保護につき金融庁などのガイドライン(指針)が設定されているが、認知症を発症して直ちに口座凍結されるものでないこと、また各金融機関における裁量(個別対応)の余地はあり、FINMAC としてこれに干渉するものでないこと、一般的に金融機関のうちでも証券会社より銀行において、やや柔軟な裁量 (個別対応)が図られているようだとの回答を得た。
【参考】金融庁「2023事務年度金融行政方針」 230829_allpages.pdf <実績/作業計画>36~37頁から抜粋引用
・成年後見制度を利用者にとって安心かつ安全な制度とするため、各金融機関の後見制度支援預貯金及び後見制度支援信託の導入を引き続き促していく。
認知判断能力が低下した顧客の取引を親族等が代理する場合における対応等について、顧客利便の向上を図りつつ、対応に伴う顧客及び関係者との間でのトラブルを未然に防止する観点から、後見制度支援預貯金等の導入状況調査の結果も踏まえて、金融機関及び業界団体との対話を行い、更なる取組を支援していく。
・金融機関における更なる認知症サポーターの養成に向け、引き続き、認知症サポーターの普及啓発及び周知のための取組を実施する。
投資家の能力や状況に応じた柔軟な顧客対応に向け、業界と引き続き議論していく。
・ 内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」における、高齢者の認知機能に合わせた金融取引の支援に係る社会実装のプロジェクトが開始されたところ、高齢顧客の金融取引における課題解決に向けた研究へのサポートも行っていく。

著者プロフィール

有田 仁(Jin Arita)

1966年(昭和・丙午)大阪府堺市生まれ。有田アセットマネジメント代表取締役。大阪工業大学大学院 知的財産研究科修了。NTT(日本電信電話)グループ・髙島屋等勤務。NTT研究所系教授陣に師事し研究発表(国際標準化専攻)および米国系業界団体(米国商工会議所・Cloud Security Alliance 等)の運営やイベント企画に関与。出雲国・松江藩(雲州松平家)とその出身者、宰相・若槻禮次郎と弁護士・岸清一に所縁あり。座右の銘は「温故知新」「和魂洋才」「古今東西」。

著書に『平成・令和社会への違和感と伝統的価値観の復古』(幻冬舎 2026年)。研究論文に『自動運転システムにおけるクラウドネットワークの通信遅延条件(共著)』(日本知財学会 2016年)『クラウドセキュリティ技術分野の知的財産戦略に関する研究』(大阪工大院・紀要 2016年)『クラウドセキュリティ技術に関する特許出願傾向と特性』(電子情報通信学会 2015年)等。

時論カテゴリー

時論人気記事

時論関連記事

PAGETOP
ページトップヘ