【第134回】Several Fables《其ノ一》「The Myth of Icarus」/新興技術(Emerging Technologies)依存の罠―AI|Humanoid Robot|Drone―
※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。
(執筆中)
ギリシャ神話の寓話(Fable)の一つに「イカロスの翼/イカロスの墜落」がある。青年イカロス(Icarus)は、その父で工匠・ダイダロス(Daidalos)の考案した自在に天空を飛翔しうる「人工の(Artificial)蝋(ろう)付けの翼」を肩に固定し、クレタ(Crete)島の迷宮ラビリントス(Labyrinthos)から脱出する。しかし彼は父の忠告を聞かず自らを過信し、あまりにも天高く飛翔し太陽に接近し過ぎた。この太陽は神(太陽神 Helios)を指している。そのため蝋が太陽の熱で溶けてしまい、翼が取れて海中に墜落し溺死する。この寓話は次への批判と警鐘を暗示する。すなわち、人間が自ら生み出した「技術」(Technology)の負の側面と、万物を創造しうる神に代わろうとする人間の「驕り」(Arrogance)が招く破滅である。
近時、世界中のあらゆる分野(産官学・軍事・文化芸術等)で「人工知能」(Artificial Intelligence、以下「AI」)の開発・実装が過熱し、連日のように新聞紙上等で関連記事が取り上げられる。またこれは単に AI のみならず、「人型ロボット」(Humanoid Robot)、「無人機」(Drone)や「自動運転」(Autonomous Car)、「Smartphone」(携帯情報端末)や「SNS」(Social Networking Service)等、新興技術(Emerging Technologies)の全般に及ぶ。21世紀の現在、社会や生活のすべてが新興技術に歯止めなく依存する方向に流れている。「効率性」(Efficiency)「合理性」(Rationality)、また「生産性」「費用対効果」「コスト削減」(コスト:費用・時間・労力等)がひたすら求められ、「非効率」で「非合理的」な「手間のかかる」考え方や振る舞いは敬遠され退けられる。
2026年10月10日付の日本経済新聞社記事によれば、9月以降の1か月余りの間に世界各国(企業・政府機関・教育機関)で不正アクセスが急増、少なくとも延べ3億人超の個人情報漏洩が確認されている。このうち日本では延べ5700万人分の流出が明らかで、世界で判明した10万人以上の個人情報漏洩事例35件のうち日本の事例が20件と、日本を標的とした攻撃が目立つ。こうした事例件数の急増や新たな攻撃手法(自動化・同時多発)の背景には AI の悪用の可能性が指摘され、高性能な AI は犯罪者らにも使いやすくなっている。AI は世界中のウェブサイト情報を学習しており、ウェブ上での調査を得意とするためウェブシステムを攻撃しやすい。とりわけ、顧客の資産を預かり運用する金融機関また情報通信・公共交通等のインフラ関連企業においては、顧客情報の漏洩はその件数多寡によらず当該顧客へ致命的な打撃を与えうる。
※参考文献
栗原聡(編著)『』、KADOKAWA、2026年
ニュートンプレス『』、ニュートンプレス、2026年
品川哲彦『』、中央公論新社、2020年






