【第125回】気候変動(地球温暖化・異常気象)《其ノ三》2026年夏季《後篇》過去最大級「El Niño」と「積乱雲」が示す熱波小康の蓋然性
※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。

(執筆中)
気象庁より本年春から「エルニーニョ」(西:El Niño)の発生が報じられている。これに伴い、ここ数年でみられた凄まじい熱波と比較し、本年夏季が小康状態となりうる仮説を立て、その蓋然性を探る。
気象庁「エルニーニョ監視速報(2026年6月10日)」 elnino202606.pdf
気象庁 気象庁 | エルニーニョ/ラニーニャ現象とは によると、El Niño とは、太平洋赤道域の日付変更線(経度180度)付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象は「ラニーニャ」(西:La Niña)と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生する。El Niño や La Niña は、日本を含め世界中の異常な天候の要因となりうると考えられている。
具体的な機序は次の通りである。太平洋の熱帯域では「貿易風」と呼ばれる東風が常に吹いているため、海面付近の暖かい海水が太平洋の西側(インドネシア近海)に吹き寄せられている。西部(インドネシア近海)では海面下数百mまでの表層に暖かい海水が蓄積し、東部の南米沖では、この東風と地球の自転の効果によって深いところから冷たい海水が海面近くに湧き上っている。このため海面水温は太平洋赤道域の西部(インドネシア近海)で高く、東部(南米沖)で低くなっている。海面水温の高い太平洋西部(インドネシア近海)では海面からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で「積乱雲」(入道雲/Cumulonimbus)が盛んに発生する。
こうした平常の状態に対し El Niño が発生している年には、東風が平常時よりも弱くなり、西部(インドネシア近海)に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部(南米沖)では冷たい水の湧き上りが弱まる。このため、太平洋赤道域の中部から東部(南米沖)では、海面水温が平常時よりも高くなっている。すなわち El Niño 発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東方へ移る。これに影響を受ける日本の天候(夏季)の特徴として以下の傾向(一般的に冷夏傾向)がみられる。 気象庁 | エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴
平均気温:西日本で低い傾向、北・東日本で並か低い傾向
降水量:西日本の日本海側で多い傾向
日照時間:北日本の日本海側で少ない傾向、東日本の日本海側で並か少ない傾向
【後日追記】特に本年は今後冬にかけて、1997年に匹敵する過去最大級の規模になると予測されている。以下は気象庁「エルニーニョ監視速報(2026年8月10日)」 elnino202608.pdf の解説を基に筆者要約。
■7月の実況:7月の El Niño 監視海域の海面水温の基準値からの差は+2.5℃で基準値より高く、7月としては1949 年以降では1997年と並び最も大きい値となった。El Niño/La Niña 現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の5月の値は+1.3℃となった。太平洋赤道域の海面水温は、中部と東部では平年より高く、西部では平年より低かった。太平洋赤道域の海洋表層の水温は、中部と東部では平年より高く、西部では平年より低かった。対流活動は、太平洋赤道域の日付変更線付近では平年よりかなり活発で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年よりかなり弱かった。このような大気と海洋の状態は、El Niño 現象時の特徴が強まっていることを示している。
■今後の見通し:今後、冬にかけて El Niño 現象が続く見込み(100%)。実況では、太平洋赤道域の中部から東部に見られる海洋表層の暖水が、中部から東部の海面水温の高い状態を維持している。大気海洋結合モデルは、今後も大気と海洋の相互作用により、太平洋赤道域の中部から東部の海洋表層の暖水を強化し、El Niño 監視海域の海面水温が冬にかけて上昇して基準値より高い値で推移し、これまでピークの値が最も大きかった1997年に匹敵する値(+4.0〜5.0℃)になると予測している。
【後日追記】2026年8月11日、統計開始以来初めて関東地方に上陸した台風15号は、日本のはるか東海上で発生し、西進して本州を東から西へ横断する異例の進路をとっている。気象庁 気象庁 | よくある質問(エルニーニョ/ラニーニャ現象) によると、El Niño 発生時は、台風の発生位置が平常時に比べて南東にずれる傾向がある。実際に今夏7月以降に発生した台風の進路はすべて東から西へ向いている。

⇧筆者宅上空の様子、2026年(令和8年)8月4日時点
ところで今夏は空を見上げると、ここ数年でみられた、険しい山脈のように空一面に何層にも湧き立つ「異形」の積乱雲が今のところ見られない。空の一角に若干発生している日であっても、その色は薄っすらとして猛々しさが見られない(筆者認識、於・大阪)。気象庁 積乱雲って どんな雲? | 気象庁 や国立研究開発法人 防災科学技術研究所 積雲・積乱雲について|雲レーダー観測による積雲分布(東京周辺) の説明によると、積乱雲とは強い上昇気流によって鉛直方向に著しく発達した雲である。雲の高さは10㎞を超え、時には成層圏まで達する。一つの積乱雲の水平方向の広がりは数㎞~十数㎞。一つの積乱雲がもたらす現象は、30分~1時間程度で局地的な範囲に限られる。
積乱雲は「大気の状態が不安定」な気象条件で発生しやすくなるが、これは上空に冷たい空気があり、地上には温められた空気の層がある状態をいう。温かい空気は上へ昇り、冷たい空気は下へ降りようとするため対流が起きやすくなる。地上付近の空気が湿っている(湿度が高い)時は、さらに大気の状態が不安定となり、積乱雲が発達しやすくなる。また大雨・ひょう・落雷・ダウンバースト・竜巻など、気象災害のほとんどは発達した積乱雲が原因である。今夏は今のところ、突発的豪雨や激しい落雷がほとんど発生していない(筆者認識、於・大阪)。さしずめ今夏の「地上の空気」や「大気の状態」はここ数年に比較してやや安定しているといえそうか。(7月28日に発生した大地震に被災され酷暑下で避難生活を送る熊本の方々には、謹んでお見舞いを申し上げます)

⇧【定点比較】筆者宅上空の様子、2025年(令和7年)8月28日時点

※参考文献
環境省「熱中症予防情報サイト」環境省熱中症予防情報サイト
厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」 熱中症予防のための情報・資料サイト | 厚生労働省
一般社団法人 日本気象協会「熱中症ゼロへ」 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進





