【第62回】「大阪・梅田」地区再開発《其ノ四》―国内最大書店「MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店」と阪急村・茶屋町(Chayamachi)―

⇧「新刊・話題書」等展示コーナーでは今月3日逝去した「不滅の背番号3」長嶋茂雄氏を特集組み
※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、筆者が所属する組織の公式見解を示すものではありません。
①MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
観測史上最早の梅雨明けとなった本年。文字通り「水無月」(6月)最終、早や酷暑の日曜日、大阪市北区茶屋町の「MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店」honto店舗情報 - MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店:ジュンク堂 - 店舗詳細 を訪れた。向学のため当社海外渉外顧問の Wolf を帯同した。同書店は2010年(平成22年)開業、売場面積:2,060坪・蔵書数:200万冊と国内最大規模を誇る。同書店の入る複合施設「Chaska Chayamachi」(チャスカ茶屋町)は地上23階、地下2階建。無機質な打ち放しコンクリートで覆われた斬新な印象の外観は、大阪市出身の建築家・安藤忠雄氏が基本設計を担当。
昨今、Smartphone 等の普及で、世代を問わず「活字離れ」が叫ばれて久しい。またインターネット通販や電子書籍などの普及で出版業界の「デジタル化」が進み、全国的に書店数が減少している。そうした中で同書店は、豊富な内容の専門書売場や7万冊が揃うとされる洋書売場など、遍く(あまねく)網羅した品揃えが特徴とされる。それに加え、吹き抜けのエスカレーターやガラス張りの壁が開放感を演出。筆者は、圧倒的な「数」の「実物の本」に囲まれる陶酔感と、手に取って「装丁(そうてい)」(ハード)と「知」(ソフト)に触れる悦び、また同時に「建築物」としての価値も備えた同大型書店に対し、多くの「人」が集い対面接客販売を旨とする「百貨店」に通ずる「アナログ」の魅力をみた。

⇧同書店は「Chaska Chayamachi」の地下1階から4階までを、吹き抜けのエスカレーターで通貫する5フロア展開、(写真右下)1階突き当たり、打ち放しコンクリート壁面に設けられた「新刊・話題書」等のコーナー

⇧(写真上)各分野の「専門書」売場(4階)、(写真下)「洋書」売場(3階)の様子

⇧【参考】阪急三番街(阪急電鉄・大阪梅田駅ターミナル)の「紀伊國屋書店 梅田本店」入口、売場面積:880坪・蔵書数:100万冊

⇧【参考】「紀伊國屋書店 梅田本店」入口付近の新刊書コーナーの様子

⇧【参考】「紀伊國屋書店 梅田本店」新刊書コーナーから店舗奥へ誘導する主導線

⇧【参考】「紀伊國屋書店 梅田本店」隣接の古書店街「阪急古書のまち(うめ茶小路)」、移転後は木の格子戸や細工壁など和の雰囲気で統一感を演出、筆者の脳裏に残るのは「阪急かっぱ横丁」に所在時の印象
②阪急村・茶屋町の由来と近況
「阪急村」とは、大阪・梅田地区にある「阪急電鉄株式会社」(以下、「阪急電鉄」) 阪急電鉄 | 鉄道・沿線おでかけ・ファン向け情報など の「大阪梅田駅」を中心に、「阪急阪神東宝グループ」 阪急阪神東宝グループ の商業施設等が建ち並ぶ「JR 大阪駅」東側エリアの通称である。エリア内には、大阪市北区の「芝田」「角田町」「茶屋町」「小松原町」などが含まれる。
このうち「茶屋町」地区の町名は、同町を南北に縦断する旧能勢街道(池田街道)に3軒の茶屋「鶴乃茶屋」「萩乃茶屋」「車乃茶屋」があったことに由来する。明治期には「北野茶屋町」と称された。大阪市建設局の「うめきた2期地区の開発の概要について - 大阪市」 3-siryou1(P8-P13).pdf 等によれば、1998年(平成10年)茶屋町市街地再開発事業計画が決定されて以降、土地の高度利用が図られている。

⇧「MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店」店内から望む「大阪工業大学 OIT 梅田タワー」の偉容(写真右手)
同書店近隣(南側)には、「学校法人常翔学園 大阪工業大学(Osaka Institute of Technology/OIT)」(筆者母校/大学院) 大阪工業大学|みらいを つくる つたえる まもる。 が、地上21階、地下2階建の「OIT 梅田タワー」(梅田キャンパス) 梅田キャンパス | 大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 - ロボット工学科 / システムデザイン工学科 / 空間デザイン学科 を構え、界隈に学術エリアを構成している。筆者も在学中(大宮キャンパス・知的財産研究科)に講義指定図書購入に同書店を足繫く訪れた。この梅田キャンパスは、「大阪市立梅田東小学校」跡地に2017年(平成29年)開校。ロボティクス&デザイン工学部・ロボティクス&デザイン工学研究科等を擁している。
同学は大阪市旭区大宮に本部を置く私立大学で、1922年(大正11年)実業家の本庄京三郎氏が設立者・校主として創立、1949年(昭和24年)大学設置。建築家・都市計画家の片岡安(かたおかやすし)氏が初代校長・理事長として創設した「関西工学専修学校」が母体。片岡氏は「一般社団法人 日本建築協会」 一般社団法人 日本建築協会 初代理事長・会長、「大阪商工会議所」 大阪商工会議所 第13代会頭、金沢市長などを歴任している。代表的作品に「大阪市中央公会堂」「大阪市役所旧庁舎(3代目)」など。

⇧「阪神百貨店」方面より、「阪急百貨店」と「HEP FIVE」観覧車越しに望む「大阪工業大学 OIT 梅田タワー」、(写真左下)「紀伊國屋書店 梅田本店」入口前の電子看板

⇧「大阪工業大学 梅田キャンパス」館内(1階ギャラリー)の様子

⇧「大阪市立梅田東小学校」跡地の石碑

⇧大阪市北区中之島に佇む「大阪市中央公会堂」(国の重要文化財)、(写真右下)在学中(大宮キャンパス・知的財産研究科)所属研究室での筆者
「NU(ヌー)茶屋町」(NU chayamachi)および「NU 茶屋町プラス」(NU chayamachi+) NU茶屋町 は、阪急電鉄が経営するファッションビル。2005年(平成17年)に開業、「プラス」は2011年(平成23年)に開業。

⇧同書店の西側に隣接するファッションビル、(写真上)「NU 茶屋町」(写真下)「NU 茶屋町プラス」
また「芝田」地区について「芝田1丁目計画」が構想されている。「阪急阪神ホールディングス株式会社」 阪急阪神ホールディングス株式会社 の「梅田ビジョン」 2_cgq76xmctvk0k0wkkgw04s8gc.pdf によれば、「うめきた2期地区開発プロジェクト」等に続く大規模プロジェクトとして、阪急電鉄「大阪梅田駅」周辺の価値向上を推し進めるものとされる。具体的には、次代を見据えて「大阪新阪急ホテル」「阪急ターミナルビル」の建て替えや「阪急三番街」 阪急三番街 の全面改修を実施。またターミナル駅としての機能を強化しつつ、大阪梅田エリアの玄関口にふさわしい複合機能拠点の開発を目指すとしている。※大阪新阪急ホテルは2025年(令和7年)1月、営業終了