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【第12回】NTT(Nippon Telegraph and Telephone Corp.)とIOWN《其ノ二》―第39回定時株主総会―

※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、筆者が所属する組織の公式見解を示すものではありません。

2024年(令和6年)も株主総会の季節が到来。「水無月」の由来の通り梅雨入りを待つ中で6月20日(木)、東京都港区は「グランドプリンスホテル新高輪」の国際館パミール3階「崑崙(こんろん)」を恒例会場に、日本電信電話株式会社(NTT:Nippon Telegraph and Telephone Corporation)グループ(筆者も二十年来勤仕)の「第39回定時株主総会」(The 39th Shareholders' Meeting)が開催されました。本年4月に成立した改正NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律 | e-Gov法令検索)の内容や完全民営化(30%超の政府保有株の売却)の是非に関する論議、また今春以降続いている株価の大幅下落等、同社経営の舵取りに株主(2024年3月31日現在株主数:1,862,170人)の関心が大きく集まる中、午前9時の受付開始までに長蛇の列ができるなど、本会場は前回比2.5倍となる1,277人の来場株主の熱気で包まれました。(オンライン視聴株主数は同3倍の9,246人)今回、株主からの質問も10件を超える展開となり、開催時間の都合上、議長(島田明 代表取締役社長)より発言機会が制限されるなど、活発な様相をみせて議事は議案採決へ進行、午前10時より1時間半におよぶ総会は終了しました。

同社株価は、年初に「1株191円」まで高値(たかね)を付けたのち値動きが冴えず、「権利落ち日」後の4~5月以降は大幅な下落を続け、総会当日の始値(はじめね)も「1株146円」の安値(やすね)で迎えています。これは、本年5月10日の2023年度決算発表会(240510.pdf (group.ntt))で示された2024年度業績予想(前年比で約15%の減益)に対して、市場に嫌気されたものとみられています。しかしながら以下に挙げる事項を勘案すると、現在の株価下落局面は、「企業価値」や「実力」を映し出しておらず、「割安」な値動きで推移しているものと考えられます。

※下記指標は同社Webサイト「連結業績ハイライト」ページ(連結業績ハイライト | 財務概要 | 株主・投資家情報 | NTT (group.ntt))参照(2018年度~2023年度、直近6期の連結業績)

営業収益5期連続増収営業利益4期連続増益当期純利益5期連続増益を果たしていること。
1株当たり当期純利益(EPS:Earnings Per Share、当期純利益を発行済株式数で割ったもの)について、5期連続増益を果たしていること。

※下記は筆者の分析

株価収益率(PER:Price Earnings Ratio、現在株価を当期純利益で割ったもの)を直近の3期でみても、12倍前後の健全な水準(倍率)で推移していること。ただし2024年5月10日の決算説明会以降、急激に倍率は下降し、直近(6月21日現在)では9.74倍であることから、現在の顕著な「割安」状況が窺えます。(下記グラフ参照)
・現在の同社株売却の動きは、個人投資家の信用取引によるものが中心とみられること。

株主還元(配当)においても14期連続で増配を実現できていること。
新中期経営戦略(2023~2027年度)(230512_2.pdf (group.ntt))において、光電融合技術を用いた次世代ネットワーク・情報処理基盤である「IOWN構想」の「実用化」への加速、生成AIコア技術である大規模言語モデル「tsuzumi(つづみ)」の商用サービス開始(2024年3月)など、成長分野へ向けて積極的に新規投資を行い、国際市場を主導しうる有望な柱を有していること。
・さらにNTT法改正により「研究成果の開示義務」が撤廃されたことを受け、(川添雄彦 代表取締役副社長/技術戦略担当の総会発言にあった様に)今後は「オープン・クローズ戦略」による、標準化を含む国際競争力強化へ向けた環境が整いつつあること。

「ファンダメンタルズ(fundamentals)/経済の基礎的条件は「株価」そのものの予想でなく、「将来業績」の予想に主眼を置いています。つまり、企業決算発表の財務諸表から成長率や安定性(健全性)、競争優位性、市場の成長性などに着目し、「長期的」視野に立って企業価値と株価とを比較検討し「裁量」するものです。これは「短期的」視野で株価の値動きを追ってデータやチャートに着目する、「テクニカル分析」などの「定量」的手法に相対するものとなります。世界的投資家として知られるWarren Buffett氏やPeter Lynch氏などの投資判断も、基本的にこうした手法に立脚しています。

こうした「ファンダメンタルズ」を捉まえた投資判断に則るならば、同社と株主にとって足元の眼目は、総会で議長を務めた島田明 代表取締役社長の発言を引用すれば、「株価向上など株主利益に資するためにも、会社(NTTグループ)として新中期経営戦略の諸施策を着実に推進」し、これにより業績予想の上振れを狙っていくことに尽きるといえましょう。

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