【第13回】髙島屋「いつも、人から。」《其ノ三》―円安と訪日客(Foreign Visitor to Japan)需要―
※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、筆者が所属する組織の公式見解を示すものではありません。
例年より「入り」が大幅に遅れた梅雨空の下、大阪市中央区の「スイスホテル南海大阪」(Swissôtel Nankai Osaka)(難波の5つ星ホテル | スイスホテル南海大阪 | 日本 (swissotelnankaiosaka.com))を訪れました。向学のため当社海外渉外顧問(無償)の Wolf(筆者内縁)を帯同しました。
2024年(令和6年)6月26日のニューヨーク外国為替市場では、ドルに対して円安が一段と加速、1ドル=160円台後半まで値下がりし、1986年(昭和61年)12月以来、およそ37年半ぶりの円安ドル高水準を更新しました。またユーロに対しても円安が進み、1ユーロ=171円台後半をつけて、ユーロが導入された1999年(平成11年)以降の最安値を更新しました。政府(財務省)・日本銀行により4月下旬から幾度かの、数兆円規模の「為替介入(外国為替市場介入)」(円買い・ドル売り)が実施されるも、この傾向は当面続く見通しです。
2012年(平成24年)12月発足の第二次安倍晋三政権による「観光立国」国家戦略(観光立国推進閣僚会議 (kantei.go.jp))は、以下4つの重点分野をとりまとめた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」として推進されました。
(1)日本ブランドの作り上げと発信
(2)Visa 要件の緩和等による訪日旅行の促進
(3)外国人旅行者の受入の改善
(4)国際会議等(MICE:Meeting・Incentive Travel・Convention・Exhibition/Event)の誘致や投資の促進
これらの施策により、2019年(令和元年)まで順当に成果を収めてきましたが、2020年(令和2年)頃から感染拡大した新型コロナウイルスによる停滞を余儀なくされました。これは、「日本政府観光局」(JNTO:Japan National Tourism Organization、正式名称:独⽴⾏政法⼈ 国際観光振興機構)の統計(訪日外客統計|JNTO(日本政府観光局))でも明らかです(下記グラフ参照/同局統計を基に筆者作成)。
しかしながら、概ね2022年(令和4年)以降続くこうした為替レート(exchange rate)の動きは、2024年(令和6年)とりわけ今春以降の訪日客数(Number of Foreign Visitor to Japan)の増加に拍車をかけています。
直近の2024年(令和6年)5月の訪⽇客数(推計値)は、3,040,100 人、前年同月⽐では60.1%増、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年同月⽐でも9.6%増となりました。これにより、本年3月以降の3か月連続で300万人を突破しています(下記グラフ参照)。 また中身を見ると、 19の国・地域(韓国、台湾、香港、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、中東地域)において、5月としての過去最高を記録したほか、インドについては単月での過去最高を更新しています。
ここ数か月における筆者の肌感覚でも、とりわけ「大阪ミナミ」すなわち御堂筋南端ターミナル駅である南海電気鉄道株式会社(以下、「南海電鉄」)「なんば駅」周辺から道頓堀にかけての商圏は、典型的な「オオサカ・ナニワ」の魅力を体験しようと、訪日客の団体・家族連れで埋め尽くされ、その割合が日本人のそれを上回っていると感じられるほど国際色に溢れています。さらに新型コロナウイルス感染拡大前と異なるのは、中国や韓国などお隣の東アジアばかりでなく、欧米や中東、東南アジア、また白人や黒人など、まさに国・地域と人種の坩堝(るつぼ)の様相を呈しており、筆者にとって同商圏の風景は、約四半世紀前との隔世の感を禁じ得ません。
1994年(平成6年)の関西国際空港(Kansai International Airport)開港とこれに伴う訪日客需要を睨み、南海電鉄は1990年(平成2年)、同空港に直結する「なんば駅」周辺の地域開発構想の一環として、同駅上に「大阪ミナミの玄関口」にふさわしい超高層ホテル「南海サウスタワーホテル大阪」を開業しました。2003年(平成15年)に同社は「Raffles International limited」(現:「Accor」、世界規模展開のホテルチェーン)との間でホテルの賃貸借契約を締結、日本で唯一の「スイスホテル」として新装開業を果たしています。同商圏の大型核店舗(百貨店)で、南海電鉄所有「南海ビルディング」のテナントである「株式会社髙島屋」(高島屋 (takashimaya.co.jp))(筆者も十年来勤仕)の大阪店は、5階部分で同ホテルと直結しています。同店は足掛け30年の間、南海電鉄と一体性をもった営業展開を図っています。なお南海電鉄は、1980年(昭和55年)「なんば駅」真下にショッピングモールの「なんば CITY」を全館開業、髙島屋大阪店との「面展開」は長い実績を有しています。
⇧スイスホテル6階フロント・ロビーの随所には、スイスの伝統産業である高級時計を題材とした装飾、(右)「Swiss Cubic Clock」(1984年、スイス製)
⇧髙島屋大阪店の時計売場「Takashimaya Watch Maison」、店舗5階からスイスホテル側への連絡通路先に展開、高級時計のコンセプトを同ホテルと共有
⇧髙島屋大阪店外商サロン(得意客向け)も、同ホテル5階入口(高速バス乗り場)近くに所在
⇧(写真上)同ホテル最上階(36階)レストラン「Table36」、(写真下)バー「Bar36」へ Wolf を帯同、昼夜を通じて大阪ミナミの景色が一望