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時論

⇧約10年前、「NTT R&D FORUM 2017」(開催地:NTT 武蔵野研究開発センタ)筆者参加時の様子

※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。

(執筆中)

(【第108回】から続く)

①技術と思想の〈あいだ〉

NTT 取締役会長、澤田純氏の著書『パラコンシステント・ワールド―次世代通信 IOWN と描く、生命と IT の〈あいだ〉』。その第Ⅱ部「IOWN Dialogue 03 技術と思想の〈あいだ〉」で、同氏は東京大学名誉教授で NTT 社外取締役の坂村健(さかむらけん)氏との対話を通じ、「人工知能」(Artificial Intelligence、以下「AI」)や「デジタル変革/Digital Transformation、以下「DX」)を進めるには、基本原理を押さえた上で「哲学」が必要であると述べる。坂村氏は、オープン・コンピュータ・アーキテクチャ=国産 OSTRONThe Real-time Operating system Nucleus」の提唱(1984年~)で知られる。(以下、筆者概括、敬称略)

・(坂村)コンピュータサイエンスの基本的な原理を理解するとともに、どういう潮流の中で技術が進展しているのかという、「メタ(meta)な視点」を持たせる教育が必要。
・(澤田)ハウツー(how-to)本などにあるように、「答え」だけ「ノウハウ」(know‐how)だけを求めるようなところがある
・(坂村)日本では基礎となる「哲学的素養」「教養」を身に付けさせる教育がなされてこなかった。
・(澤田)企業活動においても、粘り強い議論や創造性が極めて重要である。ところが自分の頭で考えないまま、どうしたらいいかと上司に聞いてくる人が増えている。
・(坂村)外部のコンサルティング会社に丸投げしてしまう企業も増えている。(筆者:これは「AI に丸投げ」とも置き換えられよう)
・(澤田)自分の考えを他人に伝えるためには、「表層的」な理解でなく基本的な原理を理解し、またそれを支える「哲学」も必要。
・(坂村)最近の DX などは、現状をまったく変えず単に「デジタル化」すればよいとの発想が目立つ。それでは単なるデジタルによる「効率化」でしかない。DX は抜本的な変革、すなわち「構造改革」という意味合いを含む。やみくもに「Buzzword」に踊らされるだけでは変革など起こせない。

②身体と IT の〈あいだ〉

第Ⅱ部「IOWN Dialogue 04 身体と IT の〈あいだ〉」では、同氏は NTT コミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部上席特別研究員の渡邊淳司(わたなべじゅんじ)氏との対話を通じ、人間の備える「五感」(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚) 超越する「第六感」的なものについて取り上げている。第六感は、「理屈」では説明のつかない、鋭く「本質」をつかむ心の働きであり、「直感」「(野性的)勘」「本能」「予感」「霊感」「危機感」「違和感」「既視感」「信頼感」「親近感」「好感(好意)」「嫌悪感」などがある。(以下、筆者概括、敬称略)

・(澤田)第六感的なものは記号化(デジタル化)できない。(筆者:言語化できない、つまり説明が困難である)
・(渡邊)身体は世界を感じるセンサーであり、身体で感じていることの中で意識できるものはごく一部。
・(澤田)年齢を重ねると、忘れたことも忘れることがある。(筆者:これは「忘却力」か)
・(渡邊)たとえ意識に上がらなくても、人間が感じているものは多い。(筆者:これは「無意識」「潜在意識」の領域か)
・(澤田)動物においても、地震の前兆を感じて逃げ出したり、渡り鳥の群れが隊列を成して同じ方向に飛ぶのもそう。自然には解明されていないことが多くある。
・(渡邊)分節化(デジタル化で消去)されずに送られる触覚や身体感覚の情報との付き合い方、複雑なものを複雑なまま受け取ることの重要性。(筆者:これは「頭〈理屈〉でなく身体〈感覚〉で覚える」ことに通じるか)

※参考文献

澤田純『パラコンシステント・ワールド―次世代通信 IOWN と描く、生命と IT の〈あいだ〉』、NTT 出版、2021年
Richard Dawkins日髙敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二(訳利己的な遺伝子 40周年記念版』(原題:The Selfish Gene: 40th Anniversary Edition)、紀伊國屋書店、2018年
栗原聡(編著)AI の倫理 人間との信頼関係を創れるか』、KADOKAWA、2026年
ニュートンプレス別冊 AI 時代の哲学(Newton 別冊)』、ニュートンプレス、2026年
Friedrich Nietzsche、木場深定訳)善悪の彼岸』(原題:Jenseits von Gut und Böse)、岩波書店1970
Philippa Foot高橋久一郎(監訳)、河田健太郎・立花幸司・壁谷彰慶(訳)人間にとって善とは何か:徳倫理学入門』(原題:Natural Goodness)、筑摩書房、2014年
品川哲彦『倫理学入門―アリストテレスから生殖技術、AI まで』、中央公論新社、2020年
西田幾多郎『善の研究』、岩波書店、1950年
佐伯啓思『西田幾多郎―無私の思想と日本人』、新潮社、2014年
佐伯啓思『自由と民主主義をもうやめる』、幻冬舎、2008年
佐伯啓思『さらば、民主主義―憲法と日本社会を問いなおす』、朝日新聞出版、2017年
佐伯啓思『反・民主主義論』、新潮社、2016年
Alexis de Tocqueville、岩永健吉郎(訳)『アメリカにおけるデモクラシーについて』(原題 仏:De la démocratie en Amérique)、中公クラシックス、2015年
Patrick Deneen、角敦子(訳)『リベラリズムはなぜ失敗したのか』、原書房、2019年

著者プロフィール

有田 仁(Jin Arita)

1966年(昭和・丙午)大阪府堺市生まれ。有田アセットマネジメント代表取締役。大阪工業大学大学院 知的財産研究科修了。NTT(日本電信電話) グループ・髙島屋等勤務。NTT研究所系教授陣に師事し、研究発表(国際標準化専攻)と米国系業界団体(米国商工会議所・Cloud Security Alliance 等)に関与。著書に『平成・令和社会への違和感と伝統的価値観の復古』(幻冬舎 2026年)。研究論文に『自動運転システムにおけるクラウドネットワークの通信遅延条件(共著)』(日本知財学会 2016年)『クラウドセキュリティ技術分野の知的財産戦略に関する研究』(大阪工大院・紀要 2016年)等。

仁徳天皇陵を含む百舌鳥古墳群近傍に生を受け、外祖母の先祖は江戸初期より、出雲国・松江藩(松平家)に禄を食む。昭和改元時の宰相で重臣として昭和天皇を輔弼した若槻禮次郎男爵は遠い姻戚。国際オリンピック委員会(IOC)委員で貴族院議員の岸清一博士は親戚筋。連載コラム「時論」では社会の諸相を週次で論じ、還暦を迎えた己(おのれ)の人生を総決算。東西の歴史観・伝統的価値観の視座で、平成・令和社会への違和感を問う。

足繁く通う介護施設。五感で接する母(要介護5/認知症)への肉親の情は年追う毎に増し、当社海外渉外顧問の Wolf(脳神経学博士・心理学専攻)もこれに寄り沿う。座右の銘は「温故知新」「和魂洋才」「古今東西」。現下の関心事は哲学(論理学)領域における 「矛盾許容」(Paraconsistent)。

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