【第109回】「京都哲学研究所」《其ノ五》「人工知能」(AI)に対峙する哲学対話(Dialogue)/Paraconsistent World―生命と IT の〈あいだ〉(2/2)
⇧約10年前、「NTT R&D FORUM 2017」(開催地:NTT 武蔵野研究開発センタ)筆者参加時の様子
※本稿内容は筆者の個人的見解であり、筆者所属組織(現在および過去)の公式見解を示すものではありません。

(執筆中)
(【第108回】から続く)
①技術と思想の〈あいだ〉
NTT 取締役会長、澤田純氏の著書『パラコンシステント・ワールド―次世代通信 IOWN と描く、生命と IT の〈あいだ〉』。その第Ⅱ部「IOWN Dialogue 03 技術と思想の〈あいだ〉」で、同氏は東京大学名誉教授で NTT 社外取締役の坂村健(さかむらけん)氏との対話を通じ、「人工知能」(Artificial Intelligence、以下「AI」)や「デジタル変革/Digital Transformation、以下「DX」)を進めるには、基本原理を押さえた上で「哲学」が必要であると述べる。坂村氏は、オープン・コンピュータ・アーキテクチャ=国産 OS「TRON:The Real-time Operating system Nucleus」の提唱(1984年~)で知られる。(以下、筆者概括、敬称略)
・(坂村)コンピュータサイエンスの基本的な原理を理解するとともに、どういう潮流の中で技術が進展しているのかという、「メタ(meta)な視点」を持たせる教育が必要。
・(澤田)ハウツー(how-to)本などにあるように、「答え」だけ「ノウハウ」(know‐how)だけを求めるようなところがある。
・(坂村)日本では基礎となる「哲学的素養」「教養」を身に付けさせる教育がなされてこなかった。
・(澤田)企業活動においても、粘り強い議論や創造性が極めて重要である。ところが自分の頭で考えないまま、どうしたらいいかと上司に聞いてくる人が増えている。
・(坂村)外部のコンサルティング会社に丸投げしてしまう企業も増えている。(筆者:これは「AI に丸投げ」とも置き換えられよう)
・(澤田)自分の考えを他人に伝えるためには、「表層的」な理解でなく基本的な原理を理解し、またそれを支える「哲学」も必要。
・(坂村)最近の DX などは、現状をまったく変えず単に「デジタル化」すればよいとの発想が目立つ。それでは単なるデジタルによる「効率化」でしかない。DX は抜本的な変革、すなわち「構造改革」という意味合いを含む。やみくもに「Buzzword」に踊らされるだけでは変革など起こせない。
②身体と IT の〈あいだ〉
第Ⅱ部「IOWN Dialogue 04 身体と IT の〈あいだ〉」では、同氏は NTT コミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部上席特別研究員の渡邊淳司(わたなべじゅんじ)氏との対話を通じ、人間の備える「五感」(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚) を超越する「第六感」的なものについて取り上げている。第六感は、「理屈」では説明のつかない、鋭く「本質」をつかむ心の働きであり、「直感」「(野性的)勘」「本能」「予感」「霊感」「危機感」「違和感」「既視感」「信頼感」「親近感」「好感(好意)」「嫌悪感」などがある。(以下、筆者概括、敬称略)
・(澤田)第六感的なものは記号化(デジタル化)できない。(筆者:言語化できない、つまり説明が困難である)
・(渡邊)身体は世界を感じるセンサーであり、身体で感じていることの中で意識できるものはごく一部。
・(澤田)年齢を重ねると、忘れたことも忘れることがある。(筆者:これは「忘却力」か)
・(渡邊)たとえ意識に上がらなくても、人間が感じているものは多い。(筆者:これは「無意識」「潜在意識」の領域か)
・(澤田)動物においても、地震の前兆を感じて逃げ出したり、渡り鳥の群れが隊列を成して同じ方向に飛ぶのもそう。自然には解明されていないことが多くある。
・(渡邊)分節化(デジタル化で消去)されずに送られる触覚や身体感覚の情報との付き合い方、複雑なものを複雑なまま受け取ることの重要性。(筆者:これは「頭〈理屈〉でなく身体〈感覚〉で覚える」ことに通じるか)
※参考文献
澤田純『パラコンシステント・ワールド―次世代通信 IOWN と描く、生命と IT の〈あいだ〉』、NTT 出版、2021年
Richard Dawkins、(訳)『』(原題:The Selfish Gene: 40th Anniversary Edition)、紀伊國屋書店、2018年
栗原聡(編著)『』、KADOKAWA、2026年
ニュートンプレス『』、ニュートンプレス、2026年
『』(原題:Jenseits von Gut und Böse)、岩波書店、1970年
『』(原題:Natural Goodness)、筑摩書房、2014年
品川哲彦『』、中央公論新社、2020年
西田幾多郎『』、岩波書店、1950年
佐伯啓思『西田幾多郎―無私の思想と日本人』、新潮社、2014年
佐伯啓思『自由と民主主義をもうやめる』、幻冬舎、2008年
佐伯啓思『さらば、民主主義―憲法と日本社会を問いなおす』、朝日新聞出版、2017年
佐伯啓思『反・民主主義論』、新潮社、2016年
Alexis de Tocqueville、岩永健吉郎(訳)『アメリカにおけるデモクラシーについて』(原題 仏:De la démocratie en Amérique)、中公クラシックス、2015年
Patrick Deneen、角敦子(訳)『リベラリズムはなぜ失敗したのか』、原書房、2019年






