【第3回】NTT(Nippon Telegraph and Telephone Corp.)とIOWN《其ノ一》―「IOWN Global Forum」と国際標準化―
※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、筆者が所属する組織の公式見解を示すものではありません。
「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」(IOWN構想とは? その社会的背景と目的|NTT R&D Website (rd.ntt))とは、「NTTグループ」(NTT / NTTグループ | 日本電信電話株式会社 (group.ntt))(筆者も二十年来勤仕)の研究所(NTTの研究所|NTT R&D Website (rd.ntt))が提唱する、次世代通信基盤(端末の情報処理まで光化)です。その特徴は、情報を電気処理を行わず光波長信号のまま処理して伝送することにあり、2024年(令和6年)の仕様確定を経て、2030年代の実用化に向け開発が進められています。この「IOWN」を構成する主要技術分野の1つに「APN:All-Photonics Network」(オールフォトニクス・ネットワークとはなにか|NTT R&D Website (rd.ntt))があります。「APN」ではネットワークから端末までの「end-to-end」が、現在の「electronics」(電子)ベースから「photonics」(光)ベースに転換され、その鍵となる革新技術として「光電融合技術」(※1)が用いられます。これにより、「低消費電力(電力効率:100倍)」「大容量・高品質(伝送容量:125倍)」「低遅延(エンドエンド遅延:200分の1)」の実現が見込まれています。
「IOWN」のグローバルな普及・推進が目的の「IOWN Global Forum」(Home - IOWN Global Forum - Innovative Optical and Wireless Network (iowngf.org))は、昨年12月、設立メンバーの一つである「NTT」を代表とし、国連傘下の標準化機関「ITU-T(※2)」主催の「CxO Roundtable」(於:アラブ首長国連邦/ドバイ)にて、IOWNの国際接続性の担保や技術仕様の公的標準策定(デジュール標準化)の重要性を提案し、合意に至りました。IOWN構想の国際標準化と世界展開に向けた取り組み(標準必須特許(※3)の確保を含む)について、今後の動向を注視したいと思います。
(※1)光電融合技術:電気通信システムの内部構成において、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合し、同じ回路内で双方の信号を混在させ最適処理する技術
(※2)ITU-T:International Telecommunication Union- Telecommunication Standardization Sector(国際電気通信連合/電気通信標準化部門)(ITU Telecommunication Standardization Sector)、局長はNTTドコモ出身の尾上誠蔵氏
(※3)標準必須特許(Standard Essential Patent):特定の標準化技術等に準拠した製品の製造・販売やサービスの提供上、使用が不可避となる特許
⇧NTT持株会社等グループ各社が入居する「大手町ファーストスクエア」遠景
⇧「大手町ファーストスクエア EAST」のNTT持株会社受付
⇧昨秋開催の「docomo business Forum'23」<会期:2023年10月12日(木)~13日(金)、会場:ザ・プリンス パークタワー東京 B2フロア>でも、IOWN関連のプレゼンテーションや展示ブースを大きく訴求
★エバンジェリスト講演『「IOWN」始動へ』(NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター IOWN推進室、技術戦略部門(兼務)、エバンジェリスト 林雅之氏)
※参考文献
『IOWN構想 ―インターネットの先へ』、澤田純氏、2019年(令和元年)、NTT出版
『NTT 2030年世界戦略 「IOWN」で挑むゲームチェンジ』、関口和一氏/MM総研、2021年(令和3年)、日本経済新聞出版